といった疑問にお答えします。
- 年末調整:令和2年度からの変更点
- 年末調整の書き方
- 年末調整の流れ
毎年12月~1月は年末調整で給与担当者にとっては忙しい時期となります。
全社員分の手続きをしなければいけないので、人数が多い会社の担当者は通常業務プラス年末調整業務がのっかるので大変ですよね。
また、毎月払っていた税金が返ってくるというイメージが強く、社員に”期待”されがちでもある年末調整は会社・社員ともに間違えたくない手続きの1つです。
そんな年末調整ですが、令和2年度からいくつか内容が変わります。
今回は、変更点や書き方などについて申告書別にまとめました。
結論:該当項目に必要事項を記入して税額を計算、変更点は以下の5つ
①給与所得控除額が改正
②基礎控除が改正
③ひとり親控除が創設
④所得金額調整控除が創設
⑤年末調整手続きの電子化
では、見ていきましょう。
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- 給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- 給与所得者の保険料控除申告書
- 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書
年末調整:令和2年度からの変更点
①給与所得控除額が改正
給与所得控除額が下記の表のとおりに改正されました。
上記の改正により、「給与所得控除後の給与等の金額の表」も変更されているので、年末調整をする際は「令和2年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」を参照してください。
②基礎控除が改正
基礎控除額が下記の表のとおりに改正されました。
合計所得金額が2,500万円を超える給与所得者は、基礎控除の適用を受けることはできなくなりました。
③ひとり親控除が創設
未婚のひとり親である場合は下記の要件をもとに、総所得金額や退職所得金額などから35万円を控除することとされました。
- その人と生計を一にする子を有すること
- 合計所得金額が500万円以下であること
- その人と事実上婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいないこと
④所得金額調整控除が創設
年収850万円を超える給与所得者で下記の要件に当てはまる場合は、年収から850万円(1,000万円を超える場合は1,000万円)を控除した金額の10%相当額を給与所得から控除することとされました。
- 給与所得者本人が特別障害者に該当する
- 23歳未満の扶養親族がいる
- 特別障害者である同一生計配偶者もしくは扶養親族がいる
⑤年末調整手続きの電子化
「保険料控除申告書」や「住宅借入金等特別控除申告書」を提出するときに添付していた書面の証明書が、年末調整控除申告書作成用ソフトを使ってデータでの添付が可能となりました。
次は書き方について見ていきましょう。
年末調整の書き方
①給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
この申告書は、会社に入社したときにいろんな書類と一緒に提出していることが多いです。
一度提出してから内容に変更が生じた場合は、出し直さないといけません。
令和2年度からの変更点として、給与所得控除額が65万円から55万円に引き下げられました。
また、今までは一律38万円だった基礎控除額が48万円・32万円・16万円と改定されています。
書き方としては、提出者とその家族の基本情報を記入します。
- 給与所得者の基本情報
- 配偶者の基本情報
- 扶養親族の情報(配偶者以外の親族)
主たる給与から控除を受けるの欄
A. 源泉控除対象配偶者
源泉控除対象配偶者とは、令和2年中の所得の見積額が900万円以下の所得者と、生計を一にする配偶者(青色事業専従者・白色事業専従者を除く)で、令和2年中の所得見積もり額が95万円以下の人をいいます。
上記に当てはまる場合は記入をします。
B. 控除対象扶養親族(16歳以上)
扶養親族とは、次の要件にすべて当てはまる人をいいます。
- 所得者と生計を一にしていること
- 配偶者以外の親族で、里子や養護老人であること
- 青色事業専従者として給与の支払いを受けていないことおよび白色事業専従者でないこと
- 所得の見積額が48万円以下(給与所得のみの場合は収入金額が103万円以下)であること
(1)上記の扶養親族のうち、16歳以上の人の基本情報等を記入します。
(2)対象の親族のうち、「同居老親等・その他・特定扶養親族」に当てはまる場合はチェックを入れます。
・特定扶養親族…控除対象扶養親族のうち、19歳以上23歳未満の人
・老人扶養親族…控除対象扶養親族のうち、70歳以上の人
・同居老親等…老人扶養親族のうち、所得者またはその配偶者の父母や祖父母などで、同居をしている人
・病気などで入院していることによる別居の場合は、同居老親等に該当します。
・老人ホームなどに入所している場合は、同居していることにはなりません。
また、扶養親族の情報は16歳以上と、16歳未満で書く欄が違うので注意しましょう。
C. 障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生
■障害者
所得者本人、配偶者または扶養親族が障害者に当てはまる場合は、該当箇所にチェックを入れ必要事項を記入します。
■寡婦、特別の寡婦、寡夫(ひとり親)
令和2年度から”ひとり親控除”が創設されました。
当てはまる場合はチェックを入れるのですが、現行の申告書には内容が反映されていないので、下記の図のように訂正をする必要があります。
■勤労学生
勤労学生とは、次の要件にすべて当てはまる人をいいます。
- 大学、高等学校などの学生や生徒、一定の要件を備えた専修学校、各種学校の生徒又は職業訓練法人の行う認定職業訓練を受ける訓練生であること
- 自分の勤労に基づいて得た給与所得等があること
- 令和2年中の所得の見積額が75万円以下(給与所得だけの場合は、給与の収入金額が130万円以下)であって、そのうち給与所得等以外の所得が10万円以下であること
D. 他の所得者が控除を受ける扶養親族等
扶養しない親族がいる場合は記入します。
住民税に関する事項
■16歳未満の扶養親族
該当者がいる場合は記入します。
■単身児童扶養者
令和2年4月1日以降に提出する際、この欄は記入不要です。
②給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
基礎控除申告書
基礎控除とは、給与所得者の合計所得が2,500万円以下の場合に、48万円を限度として所得金額から控除されるしくみです。
○あなたの本年中の合計所得金額の見積額の計算
収入金額
俸給、給与、賞与、賃金などで、給与の「額面」にあたります。
所得金額
給与所得の金額の計算方法で求めた「給与所得の金額」を記入します。
例えば、年収500万円の場合は、赤枠の計算式をあてはめて金額を求めます。
①5,000,000円÷4(千円未満切捨て)=1,250,000
②1,250,000×3.2-440,000=3,560,000円
3,560,000円を所得金額に記入します。
・2以上の会社から給与をもらっている場合は、給与の総合計額で計算をします。
○控除額の計算
・所得金額の合計額(あなたの本年中の合計所得金額の見積額)をもとに、あてはまる判定欄にチェックを入れます。
・該当する控除額(48万円・32万円・16万円のいずれか)を「基礎控除の額」に記入します。
・区分Ⅰの欄は、配偶者控除等申告書で使用するため、配偶者控除を受ける方は忘れずに記入しましょう。
③配偶者控除等申告書
配偶者控除とは、給与所得金額が1,000万円以下の人に、合計所得133万円以下の配偶者がいる場合に、38万円を限度として控除を受けられるというものです。
配偶者控除の要件
- 給与所得者と生計を一にしていること
- 令和2年中の給与収入額が103万円以下(合計所得金額が48万円以下)であること
- 青色事業専従者として給与をもらっておらず、白色事業専従者に該当しないこと
配偶者特別控除の要件
- 給与所得者と生計を一にしていること
- 令和2年中の給与収入額が133万円以下(合計所得金額が48万円超)であること
- 青色事業専従者として給与をもらっておらず、白色事業専従者に該当しないこと
- 配偶者が配偶者特別控除を適用していないこと(夫婦双方がお互いに受けることはできません)
・配偶者の氏名などの基本情報を記入します。
配偶者の本年中の合計所得金額の見積額の計算
- 基礎控除申告書と同様に「収入金額」・「所得金額」・「配偶者の本年中の合計所得金額の見積額」を記入します。
- 配偶者の本年中の合計所得金額の見積額をもとに、判定欄にチェックを入れ「区分Ⅱ」に番号を記入します。
- 控除額の計算にあてはめ控除額を算出します。
上記③の控除額の算出例
- 基礎控除申告書で給与所得者の所得合計額が3,560,000円と算出された場合、「区分Ⅰ」はA(基礎控除額は48万円)となります。
- 配偶者の合計所得が500,000円と算出された場合、「判定」欄が③(48万円超95万円以下)となります。
- 「控除額の計算」で①と②が重なる部分(38万円)が控除額となります。
所得金額調整控除申告書
令和2年度より「所得金額調整控除」が創設されました。
所得金額調整控除申告書の要件
給与所得者の年収が850万円を超えていることが前提となります。
- 給与所得者本人が特別障害者に該当する
- 23歳未満の扶養親族がいる
- 特別障害者である同一生計配偶者もしくは扶養親族がいる
計算方法
(給与の収入額-850万円)×10%
※1,000万円を超える場合は1,000万円として計算します。
所得金額調整控除申告書には、収入や所得を記載する欄はなく、「要件」を選択し、該当者の基本情報となる部分を記入して完了です。
③保険料控除申告書
控除の対象となる保険料
- 生命保険料
- 地震保険料
- 社会保険料
- 小規模企業共済等掛金
※上記の保険料を給与所得者本人が支払った場合に限られます。
保険会社より送られてきた保険料控除証明書をもとに、該当箇所に記入していきます。
書き終わったら証明書を添付して会社に提出します。
注意点だけまとめておきますね。
生命保険料控除欄
計算式Ⅰ・Ⅱの見方
新・旧保険料等の合計額別に、下記の表を使って計算をします。
例えば、
「一般の生命保険料」の「(a)のうち新保険料等の金額の合計額」が「A 25,000」の場合
計算式Ⅰ(新保険料等用)の控除額の計算式「(A、C又はD)×1/2+10,000円」に当てはめて計算をします。
25,000円×1/2+10,000円=22,500円となり、
①(最高40,000円)に入る金額は22,500円となります。
④住宅借入金等特別控除申告書
住宅ローンを組んだら、2年目からは年末調整で控除を受けることができます。(1年目は確定申告をします。)
該当者は、住宅借入金等特別控除申告書に下記の証明書を添付して提出します。
- 年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
記入する基本情報としては、
- 税務署長には管轄の税務署名
- 給与の支払者の名称(氏名)
- 給与の支払者の法人(個人)番号
- 給与の支払者の所在地(住所)
- あなたの氏名
- あなたの住所又は居所
【給与の支払者の法人(個人)番号】
・法人である場合は法人番号を、個人事業主である場合は空白
・法人番号欄がなければ余白に記入
・あなたの個人番号の記入は不要
①の欄
年末残高等証明書のⒶ・Ⓑ・Ⓒに記載されている金額の年末残高予定額を記入
2ヶ所以上から借りている場合は、合計金額を記載します。
①の欄の金額がわかれば、②以降は申告書にどの金額を記入するかや計算方法などが記載されているので、順に埋めていきましょう。
各申告書への記入は以上です。
最後に、給与担当者の年末調整の流れをサラッと紹介しておきます。
給与担当者:年末調整の流れ
おおむね下記の流れで各書類を作成し、従業員・税務署・市区町村に提出します。
年末調整は1月末までに、すべて終わらせなければいけない期限つきの業務です。
申告書の配布:~11月下旬
- 従業員へ各申告書を配布
年税額計算:~12月下旬
- 従業員から各申告書を回収
- 内容チェック
- 年税額計算
- 源泉徴収票を従業員へ配布
源泉徴収税の納付:~1月20日
- 所得税徴収高計算書:1月10日納付期限
- 所得税徴収高計算書(納期特例分):1月20日納付期限
法定調書の提出:~1月下旬
- 支払調書
- 法定調書合計表
- 源泉徴収票
- 給与支払報告書
まとめ
給与所得者の扶養控除等申告書
全社員が必要事項を記入して提出する申告書です。
給与所得控除額や基礎控除額が変更され、ひとり親控除が創設されています。
給与所得者の基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
各申告書、該当者のみ必要事項を記入して提出します。
基礎控除申告書
給与所得者の合計所得額が2,500万円以下である場合、48万円を限度として合計所得金額に応じた金額が控除されます。
配偶者控除等申告書
配偶者のいる給与所得者は要件に応じた金額が合計所得から控除されます。
配偶者控除と配偶者特別控除は、どちらか一方しか受けることができません。
所得金額調整控除申告書
令和2年度より創設されました。
年収850万円を超える給与所得者が、要件に応じた金額を合計所得から控除されるというものです。
保険料控除申告書
該当者のみ必要事項を記入し、証明書を添付して提出します。
証明書の提出方法がデータでも可能となりました。
住宅借入金等特別控除申告書
該当者は必要事項を記入し、証明書を添付して提出します。
住宅ローンを組んだ1年目は確定申告、2年目からは年末調整で控除申告をおこないます。
証明書の提出方法がデータでも可能となりました。
いままでは、「給与所得者の保険料控除申告書」や「給与所得者の住宅借入金等特別控除申告書」に、ハガキ等による紙の証明書を添付して提出していましたが、データで添付をして提出できるようになりました。
詳しくは、国税庁のページをご覧ください。
年末調整は年税額の計算以外にも各所に書類を提出するため、業務が年をまたぐ場合は年明けも気を抜かずに業務にあたりましょう。
以上です!読んで頂きありがとうございました!